介護事故を防ぐカギになるヒヤリハット

ヒヤリハットとは、「事故にはならなかったが、危なかった」という体験のことです。このヒヤリハットを他の介護者と共有しあうことにより、介護事故を未然に防ぐことが介護現場で行われています。

例えば、「夏の暑い日に車椅子を押して出かけたが、途中、利用者が汗だくで顔も真っ赤になっていることに気づいた。危うく熱中症になるところであった」というヒヤリハット事例があったとします。もしも、この事例が他の介護者に共有されていなければ、同様のことが何度も起きる可能性があり、いずれは深刻な介護事故につながるかもしれません。

きちんと共有された場合は、「今日は暑いから地面に近いぶん車椅子はもっと暑いはずだ」と気づき、日陰やエアコンの効いた施設内で休憩をとるなど適切な対応がとれるはずです。

また、ヒヤリハットの体験をシェアするための研修などを行うと「冬場はガタガタ震えて寒そうな時がありました」という別の事例を聞くことができるかもしれません。そうすると、車椅子内でじっとしている利用者は、押している介護者に比べて、より寒いはずであり、防寒対策を念入りにしようという気づきが介護者内で生まれるものです。

どんなに気をつけたとしても、1人の人間の視点はそんなに広くキャッチしているとは言えません。ずっと自分だけの感覚に頼って頑張っていると、盲点が生まれて、いずれは事故につながってしまうかもしれません。

1人の気づきが10個程度だとしたら、10人の介護者と共有することで100の気付きが生まれます。このようにヒヤリハットは、介護者にとって非常に大切なものなのです。こういったリスクマネジメントは、介護をする上でなにより気にかけるべきことです。

こうしたヒヤリハットは、経験が浅い介護士ほど気にかけるべきと思われがちですが、実は一番怖いのは業務に慣れてきた時です。業務に慣れ、介護の仕事に余裕が出てきた人ほど、リスクマネジメントの必要性を知って、1つ1つの作業に注意を図るようにしましょう。

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